引き継ぎ資料をAI(Claude)に作らせる方法|「頭の中にしかない仕事」を書き出す手順とプロンプト例【2026年版】
担当者の退職が決まった。あるいは自分が別の仕事に移ることになった。引き継ぎ資料を作らないといけないのに、手が動かない。そんな状況で読んでいる方に向けて書いています。
結論から言うと、引き継ぎ資料はゼロから書くものではなく、話した内容をAIに整えてもらって、抜けを指摘させるものです。この順番にすると、これまで半日かかっていた作業が30分程度で形になります。
引き継ぎ資料が書けない本当の理由
「引き継ぎ書 テンプレート」で検索すると、書式はいくらでも見つかります。それでも資料が完成しないのは、テンプレートがないからではありません。埋めるべき中身が、本人の頭の中にしかないからです。
しかも厄介なことに、本人は自分が何を知っているかを自覚していません。毎日やっていることは、意識せずにできてしまいます。「この取引先だけ請求書の締めが違う」「このファイルは月曜の朝に更新しないと間に合わない」。こうした前提は、聞かれなければ思い出しません。
だから引き継ぎ資料づくりで大事なのは、書式を用意することではなく、本人に質問して思い出させることです。そして、この「質問する役」はAIが得意とするところです。
やり方は3ステップ
- 作業しながら口で説明する:スマホの音声入力か録音で構いません。「まずこれを開いて、次にここを見て…」という話し言葉のままで大丈夫です
- その文字列をAIに渡して、引き継ぎ資料の形に整えてもらう:項目立てして、抜けている前提を質問させます
- AIの質問に答えて、埋めていく:ここが肝心です。質問されると思い出します。白紙に向かって思い出そうとするより、はるかに速く出てきます
音声入力のやり方は日報編で詳しく書いています。同じ方法が使えます。教育用のマニュアルを整えたい場合はマニュアル・手順書づくり編もあわせてどうぞ。
そのまま使えるプロンプト例3つ
例1:口頭の説明を引き継ぎ資料の形にする
次の説明を、後任者向けの引き継ぎ資料にしてください。「作業の目的/手順/使うファイルやシステム/関係する社内外の相手/注意点」の5項目に整理してください。説明に含まれていない内容は絶対に補わないでください。不明な箇所は「要確認」と明記し、最後に質問としてまとめてください。
--- 説明 ---
(音声入力した文字列を貼る)
「含まれていない内容は補わないでください」を必ず入れてください。これがないと、AIは一般論で穴を埋めます。自社のやり方と違う手順が、もっともらしく紛れ込みます。引き継ぎ資料でこれが起きると、後任者が間違ったやり方を正解だと思って覚えてしまいます。
例2:AIに質問させて「暗黙のルール」を引き出す
あなたは、この業務を引き継ぐ後任者です。下記の引き継ぎ資料を読んで、実際に自分がこの仕事をやると想定したときに困りそうなこと・判断に迷いそうなことを、質問の形で10個挙げてください。「例外的な処理」「相手によって対応を変えている点」「時期によって変わる作業」に特に注意してください。答えは不要です。質問だけ出してください。
--- 引き継ぎ資料 ---
(例1で作った資料を貼る)
これがこの記事でいちばんお伝えしたい使い方です。出てきた質問に答えていくと、自分でも忘れていた例外処理が次々に出てきます。「そういえばA社だけ月末締めじゃない」「繁忙期は手順が変わる」。白紙に向かって思い出すのは難しくても、質問されれば答えられます。
10個の質問のうち、半分も答えられれば十分です。答えられなかった質問は、そのまま「後任者が確認すべきこと」として資料に残しておけば、引き継ぎ後の事故を防げます。
例3:後任者がつまずく箇所を先回りする
次の引き継ぎ資料を、この業務をまったく知らない人が読んで、そのとおりに作業できるかという観点で確認してください。社内でしか通じない略語、説明なしに出てくる固有名詞、前提知識が必要な箇所を指摘してください。文章を書き換えるのではなく、指摘だけしてください。
--- 引き継ぎ資料 ---
(資料を貼る)
社内の略語や「例のファイル」といった書き方は、本人には自然でも後任者には通じません。「書き換えるのではなく指摘だけ」と縛るのがコツです。そうしないと、AIが勝手に文章を作り直してしまい、事実と違う内容が混ざることがあります。
Excelで作っていいのか
結論は「何で作るかより、更新され続けるかどうか」です。Excelでも Word でも、社内の共有フォルダにあって、みんなが開ける場所にあるなら問題ありません。
気をつけたいのは、引き継ぎ資料は作った時点から古くなっていくことです。やり方が変わったら直す。この更新が回らないと、1年後には「書いてあるとおりにやったら怒られた」という資料になります。
更新を続けやすいのは、検索できて、履歴が残って、複数人が同時に開ける形です。Google ドキュメントや共有のテキストファイルが向いています。凝ったレイアウトのExcelは、見た目は整いますが直すのが億劫になりがちです。
引き継ぎ資料に必ず入れる7項目
抜けやすい順に並べました。上の3つは、テンプレートに欄がないことが多いのに、なくて困るものです。
- この作業は何のためにあるのか:目的が分かると、後任者が例外に自分で対応できます。手順だけだと応用が利きません
- 例外処理・イレギュラー対応:「A社だけ違う」「月初だけ違う」。事故はここで起きます
- 判断が要る場面と、その基準:「金額がいくら以上なら上長に確認」のような線引き
- 作業の手順(番号つき)
- 使うファイル・システムと、その置き場所やログイン方法(パスワードそのものは書かない)
- 関係する相手(社内の誰・取引先の担当者)と連絡手段
- 作業のタイミング(毎日・毎週月曜・月末など)と締切
パスワードやアカウント情報は引き継ぎ資料に直接書かず、「どこに保管してあるか」だけを書くのが安全です。資料はコピーされて出回ります。AIに入れてよい情報・ダメな情報はこちらで整理しています。
引き継ぎで終わらせず、資産として残す
ここまでの手順で引き継ぎ資料はできます。ただ、せっかく文書にした業務の知識を、資料の中で眠らせておくのはもったいないと考えています。
私たちがAI導入をご支援するとき、業務の進め方を書き出した文書は、そのままAIに読ませる設定ファイルになります。「この会社ではこうやる」を書いておくと、次からはAIがそのとおりに動きます。引き継ぎ資料をつくる作業と、AIに仕事を任せる準備は、中身がほとんど同じです。
一人親方の事業者さまで、ホームページの更新を「自分でできる状態」にお渡しした事例があります(CASE 07 さわだ住宅改修 様)。外注し続けるのではなく、手順を残して自走できる形にする。これも属人化を解く一つのやり方です。
何をどこまで任せられるかは、AI導入で何をつくるのかでご説明しています。
まずは、いちばん引き継ぎが不安な業務から
全部を一度に文書化しようとすると続きません。「この人が抜けたら困る」と最初に思い浮かんだ業務、ひとつだけから始めてください。1つ形になれば、同じやり方で他にも広げられます。
「うちのこの業務、どう文書にすればいいのか」
そんな段階のご相談から、30分で一緒に整理できます。

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