覚書の書き方|契約書との違いと入れる7項目、場面別の型3種とAI(Claude)に下書きさせるプロンプト例【2026年版】

取引先から「この条件で覚書を交わしましょう」と言われた。契約書は前に結んであるものの、覚書に何をどこまで書けばいいのかが分からない。取引先と書面をやり取りする会社の経営者に向けて書いています。口約束で進めてきた会社ほど、どこかで止まります。

結論からお伝えします。覚書で困るのは、元の契約書のどこを変える書面なのかが書かれていないまま、文面だけがひとり歩きするからです。覚書は新しく取引を始める書面ではなく、すでに決まっている条件を足す・変える・確かめるための書面です。書面の扱いは表題では決まらず、中身で決まります。元の契約書と読み比べて差分を並べる下書きは、AI(Claude)に任せられます。この記事では、契約書との違い、入れる項目、印紙の考え方、場面別の型3種、コピーして使えるプロンプトをご紹介します。

覚書でつまずく3つのパターン

覚書そのものを知らない経営者は、ほとんどいません。困りごとは、交わしたあとの形で3つに分かれて出てきます。

つまずき会社で起きること直し方
元の契約書を特定していない「単価を変更する」とだけ書いた覚書が残っている。どの契約の第何条を変えたのかが書いていないので、半年後に元の契約書と突き合わせても、どちらが生きているのか分からない冒頭に契約書の名前と締結日を書き、変える条を番号で指す
表題が「覚書」なら軽い書面だと思っている値上げの合意を覚書1枚で済ませたが、社内では「正式な契約ではない」と扱われ、請求金額が前の単価のまま出ていた社内の扱いを表題で分けず、契約書と同じ場所・同じ番号で保管する
口で決めて、書面を作っていない納期の延長を電話で合意したが、担当者が代わった途端に話が戻る。いつ・誰が・何に合意したのかを示すものが残っていない合意したその日のうちに、1枚の覚書にして双方で持つ

3つに共通しているのは、覚書を「その場の確認」として扱い、契約の一部として残していない点です。書面で残す習慣がまだ薄い場合は、入金の催促メールの書き方から読んでください。「言いにくいことを書面にする」ときの型が先に手に入ります。

覚書と契約書の違い

どちらも取引の条件を書いた書面なので、まとめて「契約の書類」として扱われがちです。けれど、いつ・何のために作るのかが違います。

見るところ契約書覚書
作るタイミング取引を始める前取引が動き出したあと
決める範囲取引全体の条件を、初めから最後まですでに決まっている条件のうち、足す・変える・確かめる部分だけ
分量の目安数ページから十数ページA4用紙1枚から2枚
元の書面との関係元になる書面は無い元の契約書を特定して、その一部を読み替える

ここで多い思い違いが、「覚書は契約書より弱い」というものです。書面の強さを表題で決めるという考え方は、法律の側にはありません。民法第522条第2項は「契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。」と定めています(出典=e-Gov法令検索・民法)。

つまり、書面が無くても合意そのものは成り立ちます。覚書は「新しく縛るための書面」ではなく、「すでに合意したことを、後から読み返せる形で残す書面」です。この順番で考えると、何を書けばよいかが決まります。あとで読み返す人が、元の契約書と並べて意味を取れるかどうか。それが基準です。

なお、自社の覚書がどこまでの効力を持つか、どの書面が優先されるかという判定は、契約の中身と取引の経緯で変わります。この記事では判定は扱いません。争いになりそうな場面や、相手から示された覚書の文面に不安がある場面では、弁護士に確認してください。

覚書に入れる7つの項目

場面が変わっても、骨格は変わりません。次の7つが入っていれば、半年後に読み返しても意味が取れます。

項目書くこと抜けると起きること
1. 表題と、元の契約の特定「◯◯業務委託契約書(2026年4月1日付)に関する覚書」のように、契約書名と締結日を入れるどの取引の話か分からず、契約書の束から探し直すことになる
2. 当事者の表記甲・乙の割り当てを元の契約書とそろえる甲乙が入れ替わり、「甲が負担する」の意味が反対になる
3. 変える条項「原契約第5条を次のとおり読み替える」と書き、変更前と変更後を並べる変わったのが単価なのか支払日なのか、読む人によって解釈が割れる
4. 効力が発生する日「2026年10月1日以降に発注される分から適用する」のように、区切りを日付で書く進行中の案件にどちらの条件が当たるのかで、請求のときにもめる
5. 元の契約との関係「この覚書に定めのない事項は、原契約による」と1文置く覚書に書いていない項目まで白紙になったと受け取られる
6. 有効期間期限つきの取り決めなら終わりの日を、恒久的な変更ならその旨を書く一時的な値引きのつもりが、そのまま続く条件になる
7. 作成日と記名押印、部数作成日、双方の記名押印欄、「2通作成し各1通を保有する」の1文合意した日が特定できず、相手の控えと自社の控えで版が違う

7つのうち、抜けやすいのは4番と5番です。変更内容そのものは誰でも書きます。いつから当たるのか、書いていない部分はどうなるのかは、交わした当日は分かりきっているので省かれます。半年後に読む人には、その2つがいちばん要ります。

印紙の考え方と、あとで困らない残し方

覚書でよく聞かれるのが、収入印紙が要るのかどうかです。ここでも、表題では決まりません。国税庁は、課税文書に当たるかどうかの判断について「その文書の名称、呼称や形式的な記載文言によるのではなく、その文書に記載されている文言などの実質的な意味を汲み取って行います。」としています(出典=国税庁タックスアンサー No.7100「課税文書に該当するかどうかの判断」)。

同じ資料では、課税文書に当たるための3つの条件が示されています。「(1)印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項(課税事項)が記載されていること。(2)当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。(3)印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと。」

読み取れるのは、「覚書という表題だから印紙は不要」という判断はできないという点だけです。自社の覚書が課税文書に当たるか、当たるとしていくらの印紙が要るかは、書いた中身で変わります。紙で交わすか電子で交わすかによって扱いが変わる場面もあります。この判定は、所轄の税務署か税理士に確認する範囲です。記事の情報で決めずに、実物の文面を持って聞いてください。

残し方は、判定よりずっと簡単です。元の契約書と同じ場所に、同じ通し番号で置いてください。契約書はキャビネット、覚書はメールの添付のまま。この分かれ方をしていると、3年後に条件を確かめるとき、契約書だけを見て古い単価で動きます。

残すもの置き場所の決め方
原本(記名押印したもの)元の契約書と同じ綴じ・同じ棚。契約書の後ろに差す
スキャンした控え契約書のファイル名の末尾に「_覚書01」と足して、同じフォルダへ
取引先とのやり取り合意までのメールを1つのスレッドにまとめ、覚書の番号を件名に入れる

そのまま使える型3種(場面別)

中小企業でよく出てくる場面は、おおむね3つです。◯の部分を埋めれば、そのまま下書きになります。相手から示された覚書を読むときのチェック項目としても使えます。

型1|単価や金額を変える

◯◯業務委託契約書に関する覚書

株式会社◯◯(以下「甲」という。)と◯◯◯◯(以下「乙」という。)は、
甲乙間で◯年◯月◯日に締結した◯◯業務委託契約書(以下「原契約」という。)
について、次のとおり合意した。

第1条(単価の変更)
原契約第◯条に定める単価を、次のとおり変更する。
 変更前 ◯◯◯円(税別)
 変更後 ◯◯◯円(税別)

第2条(適用の開始)
前条の変更は、◯年◯月◯日以降に甲が発注する分から適用する。
同日より前に発注された分は、原契約の定めによる。

第3条(原契約との関係)
この覚書に定めのない事項は、原契約の定めによる。

本覚書の成立を証するため、本書2通を作成し、
甲乙記名押印のうえ、各1通を保有する。

 ◯年◯月◯日
 甲 住所/名称/代表者名  印
 乙 住所/氏名       印

型2|期間を延ばす・更新を確かめる

◯◯契約書に関する覚書

(前文は型1と同じ)

第1条(期間の延長)
原契約第◯条に定める契約期間を、次のとおり変更する。
 変更前 ◯年◯月◯日から◯年◯月◯日まで
 変更後 ◯年◯月◯日から◯年◯月◯日まで

第2条(条件の据え置き)
前条の期間について、原契約に定める業務の範囲、
対価、支払条件は変更しない。

第3条(原契約との関係)
この覚書に定めのない事項は、原契約の定めによる。

(末尾は型1と同じ)

型3|業務の範囲を足す

◯◯業務委託契約書に関する覚書

(前文は型1と同じ)

第1条(業務の追加)
原契約第◯条に定める業務に、次の業務を加える。
 (1)◯◯◯◯
 (2)◯◯◯◯

第2条(追加分の対価)
前条の業務の対価は、月額◯◯◯円(税別)とし、
原契約第◯条に定める支払条件による。

第3条(適用の開始)
この覚書は、◯年◯月◯日から効力を生じる。

第4条(原契約との関係)
この覚書に定めのない事項は、原契約の定めによる。

(末尾は型1と同じ)

3つとも、第1条で「何を」、次の条で「いつから」、最後の条で「書いていない部分はどうなるか」を押さえています。この並びを崩さなければ、場面が変わっても読める覚書になります。取引の入口にあたる発注の書面がそろっていない場合は、発注書の作り方と合わせてください。受注から条件変更までが1本の流れになります。

AIに下書きさせるプロンプト3種

覚書づくりで時間を取られるのは、文面を考える部分ではありません。元の契約書を読み直して、変える箇所を探す部分です。そこはAIに任せられます。以下はコピーしてそのまま使えます。

プロンプト1|覚書の型を下書きさせる

あなたは中小企業の総務担当です。取引先と交わす覚書の下書きを作ってください。

【元の契約】
・契約書名 ◯◯業務委託契約書
・締結日  ◯年◯月◯日
・当事者  甲=当社(株式会社◯◯)/乙=取引先(◯◯◯◯)

【変えたいこと】
・単価を1件◯◯◯円から◯◯◯円へ
・◯年◯月◯日以降の発注分から適用したい

【出し方】
・前文、第1条から第4条、末尾の記名押印欄まで通しで
・元の契約書の条番号が要る箇所は「原契約第◯条」と空欄で置く
・A4用紙1枚に収まる長さにする

【条件】
・印紙が必要かどうかの判定は書かない
・法的な効力の強さについての説明は書かない
・条文の言い回しは、元の契約書に合わせやすい平易な書き方にする

プロンプト2|元の契約書と覚書の食い違いを拾わせる

下の「原契約の抜粋」と「覚書の案」を読み比べて、次の4つを一覧にしてください。

【1】覚書が指している条番号と、原契約の実際の条番号が合っていない箇所
【2】甲乙の割り当てが、原契約と覚書で入れ替わっている箇所
【3】覚書で変更した条件と、原契約の別の条が食い違う箇所
【4】効力の発生日が書かれていない、または進行中の案件の扱いが読み取れない箇所

【出し方】
・「番号/原契約の記載/覚書の記載/気づいた点」の4列の表
・どちらが正しいか、法的に有効かの判断はしない

【原契約の抜粋】
(ここに貼る)

【覚書の案】
(ここに貼る)

プロンプト3|取引先へ送る依頼の文を下書きさせる

取引先に、覚書の締結をお願いするメールの本文を下書きしてください。

【入れること】
・何についての覚書か(原契約名と、変える内容を1〜2文で)
・変更の理由を1文(◯◯のため)
・同封または添付する書類と部数
・返送または返信の期限
・問い合わせ先の欄

【条件】
・300字以内
・金額と日付は「◯」で空欄にする
・相手に非があるかのような書き方はしない
・「法的に必要な手続きです」のような、当社が確かめていない説明は書かない

プロンプト3で「当社が確かめていない説明は書かない」と縛っているのには理由があります。AIに依頼文を任せると、相手に動いてもらおうとして「法令上必要な手続きとなります」のような一文を自分で足してきます。会社が確かめていない根拠を、依頼の文に書かせないための縛りです。

狙ったものが出てこないときは、条件を足すより先に、元の契約書と自社の状況を渡せているかを見てください。勘どころはAIへの指示(プロンプト)の書き方にまとめています。

AIに任せてはいけないこと

任せてよいこと人が決めること
場面に合わせて、覚書の型を下書きするどの条件を、どこまで変えるか
原契約と覚書を読み比べ、条番号や甲乙の食い違いを拾い出す拾った箇所を直すか、相手に確認するか
取引先へ送る依頼文を下書きする相手にいつ、どの順番で伝えるか
交わした覚書を一覧にして、期限の近いものを並べるその覚書が有効かどうか(弁護士に確認する)
課税文書かどうかを税務署へ聞くときの、質問文を整理する印紙が要るかどうかの判定(税理士か所轄税務署に確認する)

いちばん気をつけたいのは、押印済みの契約書を写真に撮ってそのまま貼ることです。契約書には取引先の所在地、代表者名、取引金額が並んでいます。相手は、その書面が自社のAIに渡ることを知りません。型を整えたいだけなら、社名と金額を伏せた抜粋で足ります。判断の目安は会社でAIに入れていい情報・ダメな情報にまとめています。

もう1つ、書いた覚書が有効かどうかの判定をAIにさせないでください。どちらの書面が優先されるか、相手の押印が代表者のものでよいか、印紙が要るか。この種の話は、弁護士や税理士に確認する範囲です。書面を作る作業と、合っているかの確認は、別の人が担当する仕事だと考えてください。

まず、直近に交わした1件を出してください

過去の覚書をすべて整理してから始めると決めると、手が止まります。直近に交わした覚書を1件選び、元の契約書と並べて机に出してください。

1件でも、たいてい何か見つかります。指している条番号が原契約と1つずれていた。効力の発生日が書かれていなかった。「原契約による」の1文が無かった。交わした当日は当たり前だったことほど、書かずに済ませています。

1件ぶんで直す箇所が分かったら、同じ取引先の分へ広げてください。型が決まっていると、次に条件が変わったときは空欄を埋めるだけで済みます。

取引先との書面は、少人数の会社ほど経営者が1人で抱えがちです。一人親方として現場に出ている住宅改修業様では、ご自身でHPの文章を直せるところまでAIの使い方を持っていきました。進め方は住宅改修業様の事例(CASE 05)をご覧ください。

覚書以外にどの仕事から手をつけるか迷う場合は、AIに任せられる仕事の一覧を部署ごとに並べています。取引先とのやり取りだけでも、下書きまでを任せられるものがいくつも見つかります。

経営者の頭のなかにあった取引の決まりを、会社の側に残していく流れはAI導入で何をつくるのかでご説明しています。

口約束のまま動いている取引条件を
30分で一緒に洗い出します。

まずは30分、話すだけで大丈夫です

資料も準備もいりません。
いまの仕事のことを、そのまま話してください。
合わなければ、そのまま終わって構いません。
無理におすすめすることはありません。

30分の相談を申し込む

サービス資料をダウンロードLINEで聞いてみる

投稿者プロフィール

Trash-B合同会社
Trash-B合同会社

Follow me!