値上げ・価格改定のお願いの書き方|取引先に伝える5項目と、AI(Claude)に下書きさせるプロンプト例【2026年版】

取引先に値上げをお願いしたい。金額はもう決まっているのに、文面を書き始めると手が止まる。どう切り出せば角が立たないのか分からない。取引先へ価格改定を申し入れる立場の方に向けて書いています。

結論からお伝えします。値上げのお願いが通らないのは、言い方が悪いからではありません。受け取った相手が、自分の社内で説明できる材料が入っていないからです。相手にも決裁する人がいます。「先方が値上げと言ってきました」だけでは、その担当者が社内を通せません。この記事では、取引先に伝える5項目と、そのまま使える型3つ、コピーして使えるプロンプトをご紹介します。

なぜ値上げのお願いは通らないのか

断られた理由が「予算が厳しいので」だったとしても、本当の詰まりはその手前にあることが多いです。先方の担当者が、上司に持っていける形になっていないのです。

相手の担当者は、受け取った文面をそのまま社内で回します。そのとき必ず聞かれることが決まっています。

先方の担当者が社内で聞かれること材料が足りない申し入れ通る申し入れ
いつから上がるのか「近日中に」2026年10月1日納品分から
どれが上がるのか「一部商品」A品番とB品番。C品番は据え置き
いくら上がるのか「価格改定をお願いします」単価1,200円→1,290円(7.5%)
なぜ上がるのか「諸般の事情により」人件費と運賃の上昇分。内訳を明示
他に手はなかったのか(記載なし)納品頻度をまとめる案も併記

右の列は、特別に丁寧な文章ではありません。数字と日付が入っているだけです。先方の担当者は、これがあれば上司に説明できます。無ければ「もう少し詳しく聞いてみます」と言うしかありません。

この構造は社内の稟議とまったく同じです。決裁する人が確かめたい項目がそろっているかどうかで通り方が変わります。社内向けの書き方は稟議書の書き方にまとめています。

取引先に伝える5項目

文面の長さは関係ありません。次の5項目が入っているかどうかだけを見てください。

項目書き方の目安
1改定日「10月1日ご注文分から」なのか「納品分から」なのかまで書く。ここが曖昧だと請求時にもめます
2対象全品なのか一部なのか。据え置く品目があるなら先に書く
3新しい価格改定率だけでなく、旧価格と新価格を並べる。相手は率ではなく金額で判断します
4理由自社の努力不足に見えない外部要因を、項目ごとに分けて書く
5据え置く部分と経過措置納期・支払条件・最低ロットは変えないなど。既存の受注分をどう扱うかも書く

抜けやすいのは4番と5番です。4番は「諸般の事情」で済ませてしまいがちですが、これを書かないと相手は社内で説明できません。5番は書き手が意識していないだけで、「他は何も変わりません」と一行あるだけで相手の不安がかなり減ります

先に決めておくこと

文面より先に、断られたときにどうするかを決めておいてください。「全面撤回」「時期を半年ずらす」「一部品目だけ通す」のどれを用意しているかで、書き方が変わります。用意が無いまま出すと、相手の反応に引きずられます。

根拠は「上がった分」を分けて出す

理由をひとまとめに「コスト上昇のため」と書くと、相手は妥当かどうかを判断できません。上がった要素ごとに分けて並べると、それだけで説得力が変わります。

分けて出す要素手元にある根拠書き方の例
人件費最低賃金の改定額、実際の時給改定最低賃金の改定に伴い、製造工程の人件費が上昇
原材料・仕入仕入先からの改定通知主要部材の仕入価格が改定
物流・運賃運送会社からの通知配送運賃の改定
その他電気・ガスの請求額光熱費の上昇

人件費は、公表されている数字をそのまま使えるので根拠にしやすい要素です。宮城県の最低賃金は2026年10月1日から1,098円(60円の引き上げ)になる見込みです(2026年8月5日の答申にもとづく金額で、正式には公示をもって確定します)。県ごとの額と発効日は宮城県の最低賃金東北6県の最低賃金にまとめています。

金額に置き換えると次のようになります。時給が60円上がると、月160時間で1人あたり月9,600円、年間で115,200円です。3人なら年間35万円ほど増えます。

※ 月160時間・12か月として単純計算した数字です。実際は割増賃金・社会保険料の事業主負担・昇給の連動などで増え方が変わります。自社の数字に置き換えてお使いください。最低賃金の額と発効日は、お住まいの都道府県労働局の公示でご確認ください。

人件費の総額がどのくらいの規模になるかは正社員1人あたりの年間人件費で試算しています。

この作業こそAIが速い

複数の要素を「相手が読んで分かる一文」にまとめる作業は、時間がかかるわりに正解が見えません。数字さえ手元にあれば、文章に組み立てるところはAIに任せられます。逆に、数字を持っていない状態でAIに頼むと、それらしい根拠を作られてしまいます。

そのまま使える型3つ

カッコの中を自社の数字に置き換えれば、そのまま使えます。

型1:長年の取引先へ(感謝を先に置く)

型1

平素より格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。

このたび、【2026年10月1日ご発注分】より、【弊社製品Aシリーズ】の価格を改定いたします。【単価1,200円を1,290円】へ、【約7.5%】の改定となります。

理由は【最低賃金の改定に伴う製造人件費の上昇】と【配送運賃の改定】です。社内の工程見直しで一部を吸収してまいりましたが、吸収しきれない分のみをお願いする形といたしました。

【納期・お支払条件・最低ロット】に変更はありません。【9月30日まで】にご発注いただいた分は現行価格で承ります。何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

型2:一部の品目だけ上げる

型2

【2026年10月1日納品分】より、下記の品目のみ価格を改定いたします。【A品番・B品番】が対象で、【C品番・D品番】は据え置きます。

【A品番:850円→910円】【B品番:1,400円→1,480円】

対象を絞ったのは、【該当品の主要部材の仕入価格が改定された】ためです。他の品目に影響はありません。

型3:据え置きを求められたときの返し

型3

ご事情を承りました。改定幅【7.5%】をそのままお願いすることは難しいとのこと、承知いたしました。

つきましては、次の2案をご検討いただけますでしょうか。

【案1】改定を【2027年1月1日】に延期し、幅は【7.5%】のまま。
【案2】改定日は【10月1日】のまま、幅を【4%】に抑え、【納品を月2回にまとめる】ことで配送分を圧縮。

いずれもご都合が合わない場合は、あらためてご相談させてください。

型3のように選べる形にして返すと、相手は社内で選択肢として持っていけます。ゼロか百かで返すと、そこで話が止まります。

お客様向けの短い告知文(休業・キャンペーンなど)は書き方が別です。そちらはお知らせ文・案内文をAIに任せる方法にまとめています。

AIに下書きさせるプロンプト3種

【 】を埋めてそのまま貼り付けてください。数字は自社のものに置き換えます。

プロンプト1:申し入れ文の下書き

プロンプト1

取引先へ送る価格改定のお願い文を作ってください。
改定日=【2026年10月1日ご発注分から】。対象=【Aシリーズ全品】。価格=【単価1,200円→1,290円】。理由=【最低賃金改定による人件費上昇】【配送運賃の改定】。据え置くもの=【納期・支払条件・最低ロット】。経過措置=【9月30日までの発注分は現行価格】。
条件:感謝を先に述べ、結論、理由、据え置く部分、経過措置の順。400字程度。謝りすぎず、理由は事実だけを書き、書いていないことは推測で足さないでください。

プロンプト2:相手の社内で聞かれることを先に洗い出す

プロンプト2

次の価格改定の申し入れ文を読み、受け取った担当者が社内で上司から聞かれそうな質問を10個挙げてください。そのうえで、文面のどこに答えが書いてあるか、書いていないかを対応表にしてください。
文面の書き直しはせず、指摘だけを出してください。
【ここに文面を貼る】

2番目は下書きより効きます。出す前に、相手の社内で起きることを先に見ておくためのプロンプトです。書き直しをさせないと縛るのは、指摘に混ぜて本文を勝手に作り替えられるのを防ぐためです。

プロンプト3:断られたときの代替案を出す

プロンプト3

下の条件で、取引先に提示できる代替案を3つ出してください。当初案=【10月1日から7.5%】。こちらが譲れない線=【年内に何らかの改定を始めること】。譲ってよい点=【改定幅】【開始時期】【対象品目の絞り込み】。
各案について、相手にとっての利点と、こちらが負う不利益を1行ずつ書いてください。どの案を選ぶべきかの結論は書かないでください。

AIに任せてはいけないこと

いくら上げるかを決めるのは人の仕事です。その取引先との関係、いまの受注量、代わりが利くかどうかは、社内の事情を知らないと判断できません。AIはそこを知らないまま、それらしい数字を置いてきます。

もうひとつ、下請取引にあたる場合は法令の論点が絡みます。取引上の立場に差がある関係での価格の決め方については、下請代金支払遅延等防止法や独占禁止法の考え方が関わってきます。該当するかどうか、どう進めるべきかの判断は、この記事の範囲ではありません。顧問の弁護士や、公正取引委員会・中小企業庁の相談窓口にご確認ください。

情報の扱いも気をつけてください。取引先ごとの単価表や、過去の請求実績をそのまま貼り付けないでください。先方の社名が入った条件は、社外の情報です。入れていい情報の線引きは会社でAIに入れていい情報・ダメな情報にまとめています。

価格を反映したあとの見積書や請求書づくりは見積書・請求書づくりをAIに任せる方法が参考になります。金額の計算そのものは任せない、という点は同じです。

まず1社だけ出してみてください

全取引先に一斉に出す必要はありません。いちばん話しやすい1社に、1通だけ出してみてください。

返ってきた反応が、次の文面をつくる材料になります。どこを聞かれたか、どこで止まったか。それが分かれば、2社目からは同じところを先に書いておけます。1社目は文面の練習ではなく、相手が何を気にするかを知るための1通です。

社内の決めごとを文書にして、AIに読ませるところまでの流れはAI導入で何をつくるのかでご説明しています。

「値上げのお願いを、どう切り出せばいいか分からない」
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