BCP(事業継続計画)の作り方|中小企業が先に決める5つと、AI(Claude)に下書きさせるプロンプト例【2026年版】

停電で3日間、受注も出荷も止まった。あのとき何をどの順番でやったか、いま説明できる人が社内にいない。従業員10人前後の会社で、BCP(事業継続計画)を「いつか作らなきゃ」と思ったまま置いている方に向けて書いています。

結論からお伝えします。BCPは、分厚い計画書を作る仕事ではありません。「止まったら一番困る仕事はどれか」を1つ決めるところから始まります。そこさえ決まれば、残りは連絡・データ・場所・判断役の4つを埋めるだけです。文書に組み立てる作業はAIに任せられます。この記事では、先に決める5項目と、A4一枚の型、そのままコピーして使えるプロンプト3種をご紹介します。

後回しになるのは「分厚い文書」だと思っているから

BCPが後回しになる理由は、やる気の問題ではありません。最初に思い浮かぶのが「何十ページもの計画書」だからです。手を付ける気力が湧かないまま、防災の日が近づくたびに思い出して、また閉じる。この繰り返しになります。

ですが、実際に困るのは計画書がないことではありません。止まった当日に、誰が何を判断するのかが決まっていないことです。社長に連絡がつかない数時間、現場は動けません。取引先からの電話にも答えられません。

東北の会社にとって、これは想像の話ではありません。一度経験した会社ほど「あのとき困ったこと」を覚えています。その記憶を、いま文字に残せるかどうかだけの違いです。覚えている人が辞めてしまえば、次に起きたときはまたゼロから慌てることになります。

先に決めるのは5つだけ

最初に決めるのは、次の5つだけです。ここが埋まっていれば、文書の体裁はあとから何とでもなります。

決めること決まっていないと起きること
止めない業務を1つ
全部は守れない前提で選ぶ
全部を平等に守ろうとして、結局どれも守れない
連絡の取り方
安否と業務連絡を分ける(後述)
電話が集中してつながらず、無事かどうかも分からない
データの置き場と戻し方
どこにあり、誰が戻せるか
パソコンが無事でも、必要な台帳がどこにあるか分からない
代わりの場所と手段
事務所が使えないときどこで何を使うか
出社できる人だけで、できることを手探りで始める
判断する人と、その代わり
1番目・2番目・3番目まで決める
社長に連絡がつくまで、誰も何も決められない

⑤が抜けている会社がとても多いです。順位を3番目まで書いておくだけで、止まっている時間が短くなります。「代わりに決めていい」と紙に書いてあることが、その場の迷いを消します。

①の選び方に迷ったら、「1週間止まったら、お客様が他社に移ってしまう仕事はどれか」で考えると決めやすくなります。

A4一枚にまとめる型

5項目が決まったら、この形に流し込みます。これ以上増やさなくて構いません。

【当社が最優先で続ける業務】(  )
【安否の連絡】手段(  )/集合の合図(  )/確認の担当(  )
【業務の連絡】取引先への一斉連絡の手段(  )/担当(  )
【データ】保管場所(  )/戻せる人(  )/戻し方のメモの置き場(  )
【代替】場所(  )/通信(  )/電源(  )
【判断】1番(  )2番(  )3番(  )
【最終確認日】(  年 月 日)

この一枚を、事務所と社長の自宅と、もう1か所に置いてください。クラウドだけに置くと、停電と通信断が重なったときに読めません。紙も1部残すのが確実です。

作った文書を社内で引き継げる形にしておく手順は、引き継ぎ資料の作り方でご説明しています。担当が代わっても読める状態にしておかないと、数年後には誰も中身を知らない紙になります。

AIに下書きさせるプロンプト3種

5項目のメモが手元にあれば、あとは文章にする作業です。そのままコピーして、( )の中だけ書き換えてお使いください。

① メモをA4一枚のBCPに整える

以下のメモを、中小企業向けの事業継続計画(BCP)としてA4一枚に整えてください。
・「最優先業務/安否の連絡/業務の連絡/データ/代替/判断の順位」の6見出しで構成する
・メモに書かれていない事実、数字、社名、連絡先を足さない
・埋まっていない項目は、勝手に埋めず「未記入」と書いて残す
・現場の人がその場で読める短い文にする。専門用語は使わない
(ここにメモを貼る)

3つ目の縛りが要です。これを外すと、AIは空欄をそれらしい文で埋めます。埋まった計画書は一見きれいですが、実際に停電した日に読むと、書いてある連絡先が存在しません。未記入のまま出てくるほうが安全です。

② 抜けを指摘させる

あなたは、この会社で実際に災害対応をする現場の担当者です。
以下のBCPを読み、その日に困る点を最大5つ挙げてください。
・各点について「何が分からないか」を1行で書く
・起きる可能性が高い順に並べる
・書き直しはせず、指摘だけを出す
(ここにBCPの下書きを貼る)

「書き直しはせず、指摘だけ」と縛るのが大事です。縛らないと、指摘に混ぜて本文を全面的に書き換えてきます。書き換わった文面は読みやすくなりますが、自社で決めたはずの中身が静かに置き換わっていることがあります。

③ 訓練の台本を作らせる

以下のBCPをもとに、30分で終わる社内訓練の進め方を作ってください。
・平日の昼に、地震で停電し、事務所に入れない想定
・参加者(  )人。役割は「判断する人」「連絡する人」「記録する人」
・時間の目安を分単位で入れる
・最後に「決まっていなかったこと」を書き出す時間を5分入れる
(ここにBCPを貼る)

作って終わりにしないための一手です。30分の訓練を一度やると、抜けが必ず3つか4つ見つかります。その場で紙に書き足せば、それが本当のBCPになります。

安否の連絡と、業務の連絡は分ける

連絡はまとめて考えると失敗します。「無事かどうか」と「仕事をどうするか」は、必要な速さも相手も違うからです。

安否の連絡業務の連絡
目的人が無事かいつ何を再開するか
相手従業員とその家族取引先・お客様
速さ数時間以内半日から1日
決めておくこと手段・返事の仕方・誰が集計するか誰が何を伝えるか・伝えない情報は何か

安否の連絡でよくある失敗が、「連絡してください」とだけ決めていることです。返事が来ない人がいたとき、次に誰が何をするかまで決めておかないと、そこで止まります。

取引先への一斉連絡は、文面を先に用意しておくと当日が楽になります。文面の作り方はビジネスメールの下書きをAIに任せる方法と同じ考え方で組めます。

誰が出社できるかを当日に組み直す作業も発生します。条件を決めて割り当てる手順はシフト表の作り方が参考になります。

AIに任せてはいけないこと

BCPは、間違ったまま置いておくと、いざというときに人を迷わせます。次の3つはAIに書かせないでください。

任せない理由
実際の連絡先・住所・氏名AIは空欄をそれらしく埋める性質があります。存在しない番号が載った計画書は、その日に役に立ちません。手で書き写してください
安否確認の運用そのもの誰が集計し、返事がない人にどう対応するかは、社内の事情でしか決まりません。文面は任せられますが、決めるのは会社です
制度や法令に関する判断中小企業向けにBCPの認定制度があります。要件や優遇の中身は年度で変わるため、商工会議所や中小企業庁の窓口、顧問の専門家にご確認ください

もう1つ、AIに読ませる資料そのものにも注意が必要です。BCPには従業員の連絡先が入ります。お客様や従業員の情報をAIに学習させない設定は、使い始める前に済ませてください。長い資料をAIに読ませるときの注意は長い資料を読む時間がないときの使い方にまとめています。

まず1業務だけ決めてみてください

全部をそろえる必要はありません。まず①の「止めない業務を1つ」だけ決めてください。それだけで残りの4つは考えやすくなります。

決めたら、上の型に手書きで流し込んで、AIに整えさせる。ここまでで30分ほどです。9月1日は防災の日です。それまでに一枚だけ作っておくと、今年の訓練が形だけで終わりません。

社内の決めごとを文書にして、AIに読ませて回すところまでの流れはAI導入で何をつくるのかでご説明しています。

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