業務の棚卸しのやり方|業務一覧表に落とす4ステップと、AI(Claude)に下書きさせるプロンプト例【2026年版】
担当者が休むと止まる仕事がある。誰が何をどこまで抱えているのか、社長も把握しきれていない。従業員10〜50名ほどの会社で、業務の棚卸しをやると決めたものの、何から手をつければいいのか分からないまま止まっている。その状況に向けて書いています。
結論からお伝えします。業務の棚卸しが終わらないのは、全部を一度に洗い出そうとするからです。会社の仕事は数えれば数百件あり、粒度もそろいません。先に決めるのは範囲と粒度で、書き出す作業そのものではありません。範囲と粒度さえ決まれば、集める・そろえる・表に落とすところはAIに任せられます。この記事では、業務一覧表に落とす4ステップと、表に入れる6項目、コピーして使えるプロンプトをご紹介します。
業務の棚卸しが途中で止まる3つの理由
棚卸しが途中で止まるのは、担当者のやる気の問題ではありません。始める前に決めていないことが3つあって、そこで必ず手が止まります。
| 止まる理由 | 現場で起きること | 先に決めておくこと |
|---|---|---|
| 範囲が広すぎる | 全社でやると宣言して、着手が半年先送りになる | 1人ぶん・1週間ぶんに区切る |
| 粒度がそろわない | 「経理」と「請求書に印を押す」が同じ行に並ぶ | 30分から半日で終わる単位に固定する |
| 使い道が決まっていない | 表は完成したが、誰も開かないまま古くなる | 何のために作るかを1行で書く |
いちばん多いのは粒度です。「経理」と書いた行と「振込データを作る」と書いた行が同じ表に並ぶと、件数を数える意味がなくなります。数えられない表は、引き継ぎにも人員配置にも使えません。
もう1つは使い道です。棚卸しは目的ではなく材料集めです。引き継ぎのためなのか、手順書を作るためなのか、外注の判断のためなのか。ここが決まっていないと、どこまで細かく書くかも決まりません。
引き継ぎのために作るなら、1業務1枚に落とすところまでが一続きです。書き方は引き継ぎ書の作り方にまとめています。
業務一覧表に落とす4ステップ
順番があります。いきなり表を埋めにいかず、集める・そろえる・並べる・印をつけるの4段階に分けてください。
| # | やること | 材料 | 目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 集める | 1週間の予定表・メール送信箱・共有フォルダの更新履歴 | 1人あたり30分 |
| 2 | そろえる | 書き出した行を同じ粒度に直す | AIに下書きさせて15分 |
| 3 | 並べる | 頻度の高い順に並べ替える | 10分 |
| 4 | 印をつける | その人しかできない行に印をつける | 本人と15分 |
ステップ1で白紙から書かせないでください。「あなたの仕事を全部書き出して」と頼むと、たいてい10行くらいで止まります。毎日やっている作業ほど、本人の意識に上がってきません。
予定表とメールの送信箱を材料にすると、書き出す作業が思い出す作業ではなくなります。先週1週間ぶんの送信メールを眺めるだけで、40件から60件は出てきます。
ステップ4の印が、この表のいちばん大事な列です。その人しかできない行が、会社の止まる場所です。件数を数えるためではなく、ここを見つけるために作ります。
業務一覧表に入れる6項目
列は増やさないほうが埋まります。次の6つで足ります。足りないと感じたら、使いはじめてから足してください。
| # | 項目 | 書き方 | よくある抜け |
|---|---|---|---|
| 1 | 業務名 | 動詞で終える(例:請求書を発行する) | 「経理」など部署名で書いている |
| 2 | 頻度 | 毎日・週次・月次・年次・不定期の5つから選ぶ | 年次の仕事が丸ごと抜ける |
| 3 | 1回あたりの時間 | 5分・30分・半日・1日の4段階でよい | 正確に測ろうとして進まなくなる |
| 4 | 担当 | 実際にやっている人の名前 | 建前の担当者を書いてしまう |
| 5 | 代わりにできる人 | いなければ空欄のままにする | 空欄が気まずくて名前を埋めてしまう |
| 6 | 手順の有無 | あり・口伝え・なしの3つ | 古い手順書を「あり」にしている |
5列目を空欄のまま残せるかどうかで、この表の値打ちが決まります。代わりにできる人がいない行こそ、いちばん先に手を打つ場所です。埋めてしまうと、その情報が消えます。
3列目を正確に測ろうとする会社が多いのですが、分単位の精度は要りません。4段階で十分に順番はつきます。測定に時間をかけると、それ自体が新しい属人業務になります。
6列目が「口伝え」または「なし」で、5列目が空欄。この2つが重なった行から手順書を作ってください。作り方はマニュアル・手順書づくりをAIに任せる方法にまとめています。
AIに下書きさせるプロンプト3種
そのままコピーして使えます。材料を貼るだけで、そろえる作業と並べる作業が終わります。
プロンプト1|1週間の予定表から業務を洗い出す
・1行につき1つ。動詞で終える形にそろえる(例:請求書を発行する)
・30分から半日で終わる単位にそろえる。部署名や役割名では書かない
・材料に出てこない業務は足さない
・同じ業務が複数回出てきたら1行にまとめ、回数を横に書く
(ここに予定表とメール件名を貼る)
「材料に出てこない業務は足さない」の一行を必ず入れてください。これがないと、AIは一般的な事務職の業務を補って、その会社に無い仕事まで並べます。あとで1件ずつ確かめる手間のほうが大きくなります。
プロンプト2|粒度をそろえる
・大きすぎる行は、分けるとしたらどう分かれるかを示す
・細かすぎる行は、どの行にまとめられるかを示す
・書き直しはせず、指摘だけを返してください
(ここに業務リストを貼る)
「書き直しはせず、指摘だけ」と縛ってください。縛らないと、正しい指摘に混ぜてリスト全体を書き換えて返してきます。自社の言葉で書いた業務名が、一般的な言い回しに置き換わったことに気づけなくなります。
プロンプト3|その人しかできない行を洗い出す
・「代わりにできる人」が空欄で、かつ「手順の有無」が口伝えまたはなしの行を対象にする
・止まったときに何が起きるかを、表に書かれている情報の範囲で1行添える
・表から読み取れない行は作らない。判断できない行は「情報不足」と書く
(ここに業務一覧表を貼る)
この3本目が本題です。ここで出てきた行が、その会社でいちばん先に手を打つ場所です。件数が多くても慌てる必要はありません。頻度の高い順に3件だけ選んで、そこから手順書にしてください。
頭の中にしかない仕事を引き出す聞き方
予定表とメールから拾えるのは、記録が残る仕事だけです。電話1本で終わる調整や、判断だけして人に渡している仕事は、どの記録にも出てきません。
本人に「他にありますか」と聞いても出てきません。質問を具体的にしてください。次の3つが効きます。
| 聞き方 | 出てくるもの |
|---|---|
| 先月、あなたに直接かかってきた電話は何の用件でしたか | 記録に残らない調整・問い合わせ対応 |
| あなたが休んだ日、誰かから連絡が来ましたか | その人しか答えられない仕事 |
| 去年のこの時期だけやった仕事はありますか | 年1回の仕事(棚卸しから最も抜けやすい) |
3つ目が抜けると、表は1年後に作り直しになります。年末調整、決算、免許や保険の更新。年に1回しか回らない仕事は、担当者本人でさえ普段は忘れています。
聞き取りの中身をその場で文章に落とす手順は引き継ぎ資料をAIに作らせる方法が近い作りです。話しながら書き出す形にすると、聞き取り1回で表と手順書の両方の材料が取れます。
一度作った表を古びさせない方法も決めておいてください。棚卸しは年1回の行事にすると必ず形だけになります。日々の報告から更新していく形は業務日報のテンプレートにまとめています。
AIに任せてはいけないこと
AIが得意なのは形をそろえることで、その仕事が本当に必要かを決めることではありません。要不要の判断を投げると、現場を見ていない答えが返ってきます。
| 任せてよい | 人が決める |
|---|---|
| 材料から業務を抜き出す | その仕事をやめてよいかどうか |
| 粒度のばらつきを指摘させる | 誰に引き継ぐか |
| 頻度や担当で並べ替える | 所要時間が実感と合っているか |
| 止まる行を条件で抜き出す | 空欄を空欄のまま残す判断 |
いちばん危ないのは、AIに「無駄な業務を指摘して」と頼むことです。表に書かれた1行の裏に、過去の失敗や取引先との約束が隠れていることがあります。表の情報だけでは、そこは読めません。
従業員の名前や取引先名をそのままAIに貼るかどうかは、社内で先に決めておく話です。判断の目安は会社でAIに入れていい情報・ダメな情報にまとめています。「担当A」「◯◯社」に置き換えれば、表をそろえる用途には足ります。
会社ごとに就業規則や評価制度の前提が違うため、この記事では触れていません。
社会保険労務士に、自社の制度と合わせて確認してください。
まず1人ぶん・1週間から始めてください
全社でやると決めると、たいてい着手が止まります。いちばん抜けられたら困る人を1人選んで、その人の先週1週間ぶんだけを表にしてください。30分あれば形になります。
1人ぶんでも、たいてい1つ見つかります。代わりにできる人が誰もいない行が、想像より多い。手順書があると思っていた仕事が、口伝えだった。足りない場所は、考えているときには見えず、表に入れた瞬間に見えます。
1人ぶんができたら、同じ形で次の人に広げてください。1枚できると、次からは同じ枠に入れるだけで済みます。最初から全社ぶんの様式を作ろうとすると、完成しないまま終わります。
その人の頭の中にしかない仕事を書き出して、会社の側に残していく流れはAI導入で何をつくるのかでご説明しています。
業務の棚卸しから始めてAIを導入した実例は、宮城県の住宅改修業様の事例(CASE 07)でご紹介しています。一人で全部を抱えていた仕事が、どの順番で手離れしていったかをご覧いただけます。
「あの人が休むと、あの仕事が止まる」
どこが止まるのかを見つけるところから、30分で一緒に整理できます。
まずは30分、話を聞いてみませんか
「うちの業務で使えるのか」を、実際にClaudeを動かしながらその場で確認できます。
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